笹に願いを
「ごちそうさまでした、天野くん。とっても美味しかった」
「うまかったなぁ」
「雰囲気もすごく良かったし。ホテルのレストランって、記念日とかのお祝いするには意外といいかも。場所によっては予算以上の豪華な雰囲気を味わえるし。ホント、良い記念になるよ」
「そーだな。岩見(いわみ)に言っとく?」

岩見さんは、「エブリクラブ」の現・食担当の一人だ。
私はクスクス笑いながら「うん」と言った。

「なぜにおまえは笑ってる」
「・・ん。結局私たちってさ、何でも仕事に結びつけてるって思って」
「“エブリクラブ”はより良く豊かな暮らしの情報誌だからな。いいんだよ、これで」
「うん。そうだね。天野くん?」
「なに、織江」
「ステキな誕生日プレゼント、どうもありがとう。とっても嬉しい」
「どういたしまして。来年も行こ」
「・・あるかな」
「ん?」
「・・・来年。わたしの来年、あるかな」

つい先行き不安なことを言ってしまった私は、顔を俯けた。


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