笹に願いを
あぁもう私ったら。
せっかくの楽しいお祝い事が・・雰囲気が、これで台無しじゃないの!

私は、膝に置いている両手をギュッと握りしめた。

「ごめ・・」
「あるよ」
「え・・・」

握りしめている私の手の上に、天野くんの大きな左手が、ポンと重ね置かれた。
運転中の彼は前を見たままだ。

「ある。ただ、“私の”じゃなくて“俺たちの”来年。な?」
「・・・うん」

どんなに楽しいひと時を過ごしても、もうすぐ治療が始まる不安は、私の心の隙を突くように、容赦なくわいてくる。
半年間、薬の副作用に耐えることができるだろうか。
治療を無事終えたとして、ガンが転移や再発しないという保証だってどこにもない。
投薬治療なんて、結局延命処置に過ぎないんじゃないの?

でも・・・それでも、投薬治療をしなければ、私の寿命は確実に短くなる。
ガンが巣食っている臓器を摘出しただけでは、私の体内にガン細胞が完全になくなったと言いきれないから。
だから・・そう、投薬治療は延命処置と言えるだろう。
少しでも長く生きるために、できることはしなければ。

いや、できることをしておきたい。

「なぁ織江ー」
「なあに?天野くん」
「一緒に住もう」
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