笹に願いを
今の発言に、私は思わず天野くんの顔を見た。
眠くて体はお疲れモードのままだけど、ビックリしたおかげで、思考がちょっとだけ目覚めた気がする。

「それ・・どういう意味よ」
「俺、まだおまえとしゃべりたい。おまえは?」
「それは・・・わたしも」
「だろ?だが体はしゃべり疲れてる。だから場所移動だ。ベッドに寝っ転がって続きをしよう」
「つ、つづき、って・・」
「しゃべりだよ、もちろん。んで、眠くなったらそのまま寝ればいい。どーだ、中々いい案だとは思わないか?」
「・・・そうね」

・・・この人は、私のことを「最高のパートナー」と言いながら、女性として見てない。
全然。これっぽっちも。
たぶん天野くんは、一度もそういう目で私を見たことがないんだろうな。
それはそうだよね。
明日から入院する私のことを、異性として、恋愛対象として意識したことないから、「一緒に寝よう」なんて提案を気軽にできるんだろう。
私たちはパートナーだから。
私たちの関係がこれ以上発展することは、ありえない・・・。

これで私に対する天野くんの気持ちがハッキリしたと解釈した私は、むしろサッパリした気分になった。
私一人だけヘンに意識する必要なんてないんだ。

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