今日も来ない、きみを待ってる。
私の気持ちを伝えたあと、彼は車で家の近くまで送ってくれた。
家の近くに着くまで、車内はしんと静まりかえっていた。

「今まで、ありがとうございました」

車を降りるときに、私は彼にそう言った。
彼は何も言わず、私のほうを見ようとはしなかった。

カップルが別れるときって、こんな感じなのかな。
私と彼はカップルですらなかったけどね…

私はシートベルトを外し、助手席のドアを開ける。
足を地につけようとしたとき、ふいに頭によぎる。

降りたら、彼とはもう終わってしまうんだ。
そう思うと、再び涙が浮かんできて溢れだしそうになる。
はやく降りなきゃ。

私が車から降りようとすると、右腕をつかまれた。
予想外の出来事に驚き、私は後ろを振り向く。

「あさ…くらさん…?」

私が呼びかけると、彼は少し間を置いたあと彼は口を開いた。

「るいちゃんと、出会えてよかった」

彼がそんなことを言うとは思わなかった。
私は嬉しくて、こらえていた涙がまたぽろぽろと溢れだす。

麻倉さんの過去に踏み込んだから、私のことを嫌いになってしまったのだと思っていた。
だから彼の気持ちがわかって、私はとても嬉しかった。

「私も、麻倉さんと出会えてよかったです」

私は泣きながら笑った。
ひどい顔だっただろうなと思う。

彼の腕を握る力が緩んで、私は車を降りて後ろを振り向く。

「この先、ちゃんと誰かと幸せになれよ」

彼はそう言って、私に手を振った。
そして私は、車に背を向けてゆっくりと歩き始める。

麻倉さん…本当にあなたのことを好きでした。

彼と過ごした日々が昨日のことのように思い出される。
私は溢れてくる涙を拭うけれど、止まる気配はなかった。
しばらくは泣き続ける日々が続くだろう。

角を曲がり彼から姿が見えなくなってから、私は地面にへたりこんで声を上げて泣いた。
< 23 / 26 >

この作品をシェア

pagetop