クラウディアへようこそ
(また、いちから探し直しか……)
それでも、この変態社長に弄ばれるよりよっぽどましだ。
さっさと解放してくれないかと首を長くして待っていると、一色社長は離すどころかますます顔をこちらに近づけてくるではないか。
「何をバカなことを言っている?俺とお前が赤の他人だって?」
「そうです!!さっきからそう言ってるじゃないですか?」
もはや、やけくそ気味に怒鳴りつける。相手が社長だということもすっかり忘れている。
当たり前のことを主張するのに、なぜこんなにも無駄な労力を使う必要があるのだろうか。
「もしかして……本当に覚えてないのか……?」
「何のことですか……?」
……驚愕と失望。
一色社長の表情はまさにそれだった。
一色社長は私の右手の拘束を解くとゆっくりと己のコンタクトレンズを外し、前髪を掻き上げた。