【完】素直じゃないね。


充樹先輩の言葉を最後に、水を打ったようにしんと静まりかえる図書室。


その時、窓の外から声が聞こえてくることに気づいた。


反射的に時計を見れば、下校開始時刻から十分近く過ぎていて。


あ、まずい! 掃除がなかった分、乃亜のこと待たせてる!


「すみません!
大事な大事な友達が待ってるので、そろそろ戻ります!」


「うん、またね、つっちゃん」


駆け出したあたしの背中に放たれる、充樹先輩の声。


またね、か。

なんとなくいい響きだと思った。


あたしは振り返って、笑顔を向けた。


「はい! また」


高嶺にも、こんなふうに自然にまた明日って言えるようになりたい。







< 150 / 409 >

この作品をシェア

pagetop