【完】素直じゃないね。
充樹先輩の言葉を最後に、水を打ったようにしんと静まりかえる図書室。
その時、窓の外から声が聞こえてくることに気づいた。
反射的に時計を見れば、下校開始時刻から十分近く過ぎていて。
あ、まずい! 掃除がなかった分、乃亜のこと待たせてる!
「すみません!
大事な大事な友達が待ってるので、そろそろ戻ります!」
「うん、またね、つっちゃん」
駆け出したあたしの背中に放たれる、充樹先輩の声。
またね、か。
なんとなくいい響きだと思った。
あたしは振り返って、笑顔を向けた。
「はい! また」
高嶺にも、こんなふうに自然にまた明日って言えるようになりたい。