【完】素直じゃないね。


あたしはガツガツと詰め寄るなり、グイッと男のネクタイを掴んだ。


「ちょっと、乃亜になにしてんの!」


「え、えっ!」


突然の奇襲に、困惑の表情を浮かべる男。


と、空いていた腕を後ろからぐいっと引っ張られた。

反動で動きが制される。


こんなときに、なに!?


イライラして振り返ると、それは乃亜の今にも折れてしまいそうな細い腕で。


「乃亜……?」


「つかさちゃん、違うの……っ」


乃亜が訴えかけるような必死な顔で、あたしの腕をぎゅうっと握りしめたまま、ぶんぶんと首を横に振った。


でもあたしは、乃亜が言っていることと、この状況を呑み込めず。

「へ?」

思わず間抜けな声を上げる。

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