【完】素直じゃないね。


「つーか、出てくんのおせぇから。
俺を何分待たせる気だよ」


「ご、ごめん。ちょっと寝不足で」


「……へぇ。俺のこと考えて眠れなかったんだ?」


あたしの元へ歩み寄りつつ、口の端を上げ、意地悪な笑みを浮かべる悠月。


「ち、違うしっ!」


「じゃあなんでこんなに顔真っ赤なわけ?
教えてくんねぇ? つかさちゃん?」


……うっ。

なにからなにまで図星すぎて、言い返せない。


ぐぐぐと押し黙っていると、悠月がこちらへ手を伸ばしてくる。


そして、自然な動きですっとあたしの髪をすいた。


「ふっ、寝癖ついてんじゃん」


見上げれば、そこには笑みを浮かべる悠月。


陽の光と相まって、思わず目を奪われるほどに輝いて見えて。


「え? わ、分かんなかった……」


ドドドドと心臓が忙しなく音を立てて暴れだす中、そう言うのが精いっぱい。


や、やばい。悠月が優しくって調子狂うよ……。


これが、〝彼女〟ってやつ、なんだ。


悠月の対応に触れて、改めて強く実感して。


やっぱり、悠月といるとばかみたいに体温が上がる……。

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