【完】素直じゃないね。


……えっ?


眠気なんてどっかに投げ捨てて、あたしは慌てて辺りを見回す。


すると前方に、スクールバッグを肩にかけ、壁に寄りかかる人影を見つけた。


その人物の正体を認識するなり、思わず目を見開き、大声を上げる。


「ゆ、悠月……!?」


「うん、悠月だけど」


あれ? 前にもこんなやりとりした覚えが……。

って、そうじゃなくて!


「なんでここに?」


だって、悠月の家って学校を挟んで反対側だよね?


「なんでって彼女を迎えに来たんだよ」


悠月はご立腹みたいだけど、あたしは〝彼女〟なんて聞き慣れない単語をさらっと言われて、瞬間頬を赤らめた。


悠月の口から〝彼女〟って言葉が飛び出すと、破壊力がすごいって……。

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