結婚相手の条件


いただきます、と声を出せば
総務課長も同じように手を合わせ箸を取る


口の中に運ぶ料理の味なんて
全くわからない
そのくらい緊張し
早く帰りたい気持ちになる


沈黙を破ったのは
また総務課長だった


「金曜日は随分と飲まれていましたね」


金曜日、というのはあの日だ
スミレがいたからと言っても
かなり飲んだのは確かだ
そもそも、何故それを知っているのか

社員全員参加なのだから
参加したに違いないが
私の記憶では
総務課長を見た覚えはない


『あ、そうですね…後輩の絡み酒を止めさせようと、潰すつもりだったんですが…潰されちゃいました』


「そうでしょうね…貴方の後輩は潰れかかった貴方を放って、営業部の若手と意気投合していましたから」


そう言われ、私は総務課長を見た
予想と違うからだ
では、私は一体誰と?

忘れようとしていた
あの男の寝顔を思いだしていた


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