専務に仕事をさせるには
「ミカちゃんが居ないなら、グレース(ここ)に来ても仕方ないな?」
「そんな事言わないで?私が居ない間、この美美ちゃんが楽しませてくれますから!」
副社長は私をチラッと見て、ブランデーの入ったグラスに手をかける。
「美美です。よろしくお願いします。あの…お隣に座っても宜しいですか?」
ミカさんから、『今野さんは知らない人が隣に座るのは嫌うから、最初は私の隣に座ってね?』と言われていた為、私はミカさんの隣りに座っていた。
「悪いがそのままで居てくれ」
これは副社長の懐に入るのは相当難しいかな…
「今野さん、そんなに警戒しなくても、彼女は大ママの姪で大学生なの、だから大丈夫だって!」
そう、私は大ママの姪で大学生という事になっている。
大学生はちょっと無理があるかなっと思ったけど、恭子ママに大丈夫と言われて調子乗ったのだが…
「へぇー君、大学生なの?」
「はい、名古屋の大学なんですけど、こっちで就職したくて、今、会社周りに来てるんです。その間叔母さん、じゃなくて大ママの所にお世話になってるんですよ」
「そぅ大学生か…」
私の作り話を副社長は信じてくれたようで、副社長の硬かった表情が少し和らいだように見えた。
ミカさんもそれを感じたようで、「ごめんなさい。少し席を外しますけど、美美ちゃんをイジメちゃだですよ?」と席を離れていった。
先程、黒服の人がミカさんに耳打ちしに来ていたから、多分他のお客様のテーブルへ呼ばれたのだろう。
「あの…今野さん、お名刺頂けませんか?」
大物人や芸能界など世間に顔や名前の知られてる人は簡単には名刺を出してくれないが、これ迄のミカさんのお客様は名刺が欲しいと言えば皆んな出してくれた。
「悪いが、名刺は断わる」
「えーダメですか?就職の相談に乗って貰おうと思ったんですけど…」