専務に仕事をさせるには

なんで… 

家まで押しかけてきたの?

あ…


ゾクッ

背中に冷たい嫌なものが走る。


嫌な予感がする…


こちらについた時に食べたお蕎麦が美味しくて店主に頼んで母に打ちたてのお蕎麦を送って貰ったのだ。

それが専務の目にとまれば…

ヤバイ…

まだ宿泊する予定だったけど明日の朝早くここを出よう。

今夜は離れの宿泊は私だけだって言っていたから最後に月明かりでゆっくり露天風呂に入ろう。

脱衣所で浴衣を脱ぐと電気を消し月明かりを頼りに湯場へと向かう。

湯に浸かり空を見上げればお月様が微笑んでくれている。


ああ、綺麗なお月様。

小さい頃よくお父さんと夜空を見上げていたなぁ。


『ねぇパパ、お月様はお餅が好きなの?』

『ん? どうしてだい?』

『だってウサギさんがいつもお餅をついてるでしょ?』

『そうだね?』とお父さんは笑っていた。

そして『鈴々はずっと素直のままで居てくれよ?』と私の頭を撫でてくれた。


いつからかなお月様にはウサギは居ないって知ったのは…

子供の頃は願えば何でも叶うと思っていた。

遠足の日は『晴れますように!』と、願うと必ず晴れていた。

運動会は『一等賞を取れますように!』と願うといつも1位を取っていた。

そしてサンタさんにお願いしたプレゼンは必ずクリスマスの朝、枕元に置いてあった。

いつからかな…

どんなに望んでも叶わない事があるって諦める事を覚えたのは…


その時脱衣所の引き戸が開いた。

ガラガラ





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