あの頃、きみと陽だまりで




「お、お母さん?」

「なぎさっ……なぎさ、なぎさ、なぎさっ……!!」



何度も何度も名前を呼んで、私の手を両手でぎゅっと握り、手の感触を確かめる。

それは、私の存在を確かに確認するように。



初めて見る、瞳から大粒の涙をこぼし、顔をぐしゃぐしゃにして泣くお母さんの姿。

その姿ひとつで、お母さんがどれほど自分のことを思ってくれていたか、言葉にしなくても伝わってきた。



お母さんの声に応えるように、私はうまく力の入らない手でその手をきゅっと握り返した。





それから、駆けつけた看護師さんや医師からの検査等を終えた私は、ベッドにもたれながらも体を起こせるようにまでなった。

そんな私の横で、時間の経過とともに落ち着きを取り戻したお母さんが現在までの状況を話してくれた。



あれから、今日で丸1週間が経っていたこと。

あの日、私が家を出て行ったことに気付いたお父さんとお母さんは、ふたりで必死に私を探してくれたこと。

見つからず、諦めかけていたところで救急車の音を聞き、嫌な予感がして事故現場に行ったこと。



「怪我自体はひどくはなかったんだけど、強く体をぶつけていて……お医者さんの話では『この1週間が勝負になるでしょう』って言われてたの」



『1週間』。その時間に、ああだからかと納得できた自分がいた。

新太が言っていた、神様がくれた『1週間』。それは私の命が繋がっていられるギリギリの期限だったんだ。




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