あの頃、きみと陽だまりで





真っ暗な世界の中で、遠くから声を聞いた。



【君の願いを叶えてあげる】



……本当に?



【本当だよ。そのために1週間、時間をあげる。その時間のあいだに彼女が一瞬でも帰りたいと願えれば、彼女の魂は体に戻れる】



どうして?

無条件で帰してあげればいい。待ってる人のもとに。



【今の彼女は、このまま死んでしまいたいとさえ思ってる。そんな彼女はそのまま戻っても同じことの繰り返しだ】



……同じことの、繰り返し?



自分を傷つけ、命を投げようとする。

きっとその度、もっともっと自分が嫌いになって、いつか本当に捨ててしまう日がくるだろう。

そんなのは、いやだから。



……わかった。約束、しよう。



1週間という、決して多くはない時間の中で、彼女にしてあげられる限りのことをしよう。

心を塞いだ女の子にどう接すればいいかはわからない。



けど、こんな俺でもなにかひとつくらいしてあげられることがあるんじゃないかって

彼女が笑ってくれる日が待っているんじゃないかって

そう懸けるように思うのはきっと、なにも出来ずに終わりゆくものを見るしか出来なかった、弱い自分をしっているから。



今度こそ、最後くらいは

力になりたいと、願ってる。





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