憚りながら天使Lovers
ドッキドキ☆温泉旅行Part3
「玲奈の本心が聞けて嬉しい。俺も玲奈と同じ気持ちだから」
「レト」
 握られた手が引き寄せられ、自然とレトの腕の中に入ってしまう。
(あっ……)
 レトを見ると自分の唇近くまで顔が迫っている。
「ダメ! ダメだよレト。私、ルタの彼女だし。貴方のお兄さんだよ?」
 寸前で顔を背け玲奈はキスを避ける。
「知ってる。だけど俺も本気で玲奈を好きになってる。ルタにも渡したくない。玲奈は俺とルタ、どっちの方が好き?」
(うっ、正直どっちも好きだ。でも、約束は破れない)
「ル、ルタ……」
「そうか」
 玲奈を優しく放すとレトは距離をとる。レトの沈黙にいたたまれなくなり玲奈は謝る。
「ごめん、レト」
「いや、俺の方こそ強引だった。すまない」
 レトは本当に申し訳なさそうに頭を垂れる。
(レトとの時間を過ごす度に思う。本当にコイツは優しくていいヤツだ。私、こんなレトを諦めてまで、ルタを待つべきなんだろうか……)
「ぶっちゃけさ、私のどこが好きなの? 取り立てて美人じゃないし、スタイルだって幼児体型だし、胸もあんまないしさ」
 玲奈は冗談めかして明るく言うが、レトは真面目な顔で返す。
「人を好きになるのに理由は無いだろ? 玲奈と同じで、いつの間にか好きだったんだ。スタイルなんてどうでもいい。純粋に傍に居たいって思うんだ」
(正論過ぎて次の言葉が出ない)
 再び流れる沈黙の中、レトが切り出す。
「俺、待つよ」
「えっ?」
「ルタより俺の方が良いって玲奈が思えるまで待つ」
(なんて意地らしいことを言うんだ! このイケメン天使!)
「そんな日が来るとは限らないよ? それでも待つの?」
「待つ。玲奈以外の相手なんて考えられない」
(正直、嬉しい……)
「待ってていい?」
「はい、何の確約もできませんけど」
「ありがとう」
 レトの感謝と笑顔に玲奈の頭の中は湯気が沸き続けている。
(最初に出会った頃とギャップがありすぎ! こんな生き物反則だ!)
「あの、私、そろそろ寝たいんだけど」
「ごめん、気付くの遅かった。部屋に戻るよ」
(ん? 部屋に戻る、プリシラ居る、天使状態は見えない、人間姿になる、アウトー!)
「ちょ、ちょっと待って!」
「なに?」
「プリシラはどうするの? 彼女が起きたら、どのみち人間姿で対応しなきゃいけないでしょ?」
「大丈夫だよ。玲奈以外にはトキメかないから」
(うっ、嫉妬を見透かされてる……)
「じゃあ、おやすみ。愛してるよ、玲奈」
 愛の告白をさらりと言ってのけ、レトは飛び去って行く。
(去り際に愛を語るところなんてルタとそっくりで、やっぱり兄弟なんだな~って、ほのぼの出来ない! どうする、どうなる私! これって二股? いやいやいや、レトとはまだ何もしてないし。でも、好きって言っちゃったし、遺憾ともしがたしー!)
 一人悶々としながら玲奈はベッドでのたうち回っていた。
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