龍の神に愛されて~龍神様が溺愛するのは、清き乙女~
「絶対に大丈夫だ。
だから、私を信じてほしい」


葵を真剣に見つめ、安心させるための言葉をくれる。

駄目だとわかっている。

しかし、皐月という存在を知ってしまった以上、もう戻れない。


「はい。
貴方を信じます……皐月様」


信じてみたいと思った。

葵の事をこれ程真剣に考えてくれるたった一人の神を。


「必ず守る。
だから、何も心配しなくてもいい」


皐月は、再び葵を抱きしめる。

前回はただ、存在を確かめるような強い抱擁だった。

しかし、今回は違う。

まるで、壊れ物を扱うような優しい抱擁。

そんな皐月に身を委ね、目を閉じた。

そうしていると、今まで聞いている余裕などなかった皐月の鼓動が、体に触れている耳から伝わってくる。

落ち着いていて、一定に脈打つ鼓動。

それは、不思議と葵の不安に満ちた心を落ち着かせてくれる。


「葵……眠ったか?」


急に言葉がなくなった葵を心配し、皐月が声をかけてくる。

葵は、目を閉じたまま口だけを動かした。


「いいえ。
でも、こうしているのが心地よくて……。
少しだけ、眠くなってきました」

「なら、このまま眠ってしまえばいい。
夜明け前、私がお前の部屋に運んでおく」


皐月に運ばせるなんて申し訳ないし。

このまま眠ってしまうのが勿体ないという思いも強いから。

眠りたくない。


「今だけは、何もかも忘れて眠れ」


優しくそう呟いて頭を撫でてくれる大きな手。

それにより、ゆっくりと睡魔に襲われる。

着物越しに感じる皐月の体温。

それがとても温かく感じる。

こんなにも温かく優しい眠りに誘われるのは生まれて初めてだ。

誰かの温もりが傍にあると、こんなにも優しい気持ちで眠れる事が幸せだと思う。


「おやすみ、葵」


皐月の言葉が葵の耳に届く。

そして、眠りにつく寸前、葵の唇に柔らかく温かな何かが触れた気がした。




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