からっぽ。
「自分は……、
裕美さんとやり直す事は出来ません……。
子供の事は、出来る限りの事をさせて戴きたいと思ってます」

俺は、父親の顔だけを見て、そう答えた。


裕美は、ハンカチで目元を押さえている。


「あんた、女をなんだと思ってんの?」

裕美の妹が、姉を庇う様に言い放つ。

何も知らない妹には、憤りが隠せない相手なのだ。


しばらく、沈黙が続く………



「坂下君、DNA検査を受けてくれないか?」


沈黙を破って出た言葉に、黙っている母親と文句を言う妹。


俺は、彩葉を見た。

生まれた時よりも、顔立ちは整って来ている。


何より、疑う余地のない程、俺に似ていたのだ………



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