呼吸(いき)するように愛してる
「違う!するもん!私結婚でも何でも、匠くんとするもん!」

必死にしがみつく私に、匠くんがクスッと笑った。

「美羽、今までずっと好きでいてくれて、ありがとう!」

匠くんの言葉が、私の耳に身体に、優しく響く。匠くんの胸から顔を上げたら、少しだけ匠くんが身体を離した。わずかなのに匠くんの温もりが離れて、寂しく感じる。

「そんな顔、しない」

「?」

囁くように言った匠くん。どんな顔?と見つめれば、匠くんの顔がゆっくりと近付いてくる。私が、そっと目を閉じると……

匠くんの唇が、私の唇に重なった。

触れただけで、すぐに離れ、また重なる。何度も、何度も……

匠くんの唇の、温度とか柔らかさとか濡れた感じとか。合間に漏れる、お互いの吐息とか。それだけで頭がいっぱいになっていた時、チュッと下唇を吸われた。

「美羽、息して」

ハァ~と息を吐いて目を開けると、優しい眼差しの匠くんと目が合う。

とたんに恥ずかしくなり、匠くんの胸に頬を寄せた。

クスクスと笑う匠くん。

「匠くんの意地悪!……でも、そんな匠くんも大好き!」

顔を上げずにそう言うと、匠くんがギュッ!と強く抱きしめてくれた。

……今日は、このくらいにしておいてあげる。

でも、きっといつかは伝えたい。

匠くん、愛してる。

呼吸(いき)するように、愛してる──





END



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