【完】好きなんだからしょうがないだろ?
重くのしかかる沈黙に息が詰まりそうだ。
玲央の、バニラの香りが余計にそれを駆り立てようとしてるみたいに鼻を撫でる。
「キスしたことも?」
「……っ、あれは、事故。カウントなんてされないんだから」
あんな人の気持ちを無視した強引なファーストキスなんて。
「ふーん」
「……だいたい、なんで、玲央がそんなこと言ってくるの?」
ポツン……と零れた声が夕暮れの中を彷徨う。