【完】好きなんだからしょうがないだろ?
ちょっとだけ莉子の走る綺麗な姿を目に映すと、やっぱりその姿は遠目に見ても眩しくて。
中庭はグラウンドを見渡せるベストポジション。
でもここは、あの帝王と囁かれている轟先輩の昼寝テリトリーだ……。
通りすがりを装ってみたけれど、今日は帝王不在のご様子だ……。
轟先輩の、あたしの忘れたい理由を“聞かせろよ”……なんてのは、きっと気まぐれだったみたい。
なんて……安堵の息をつくあたし。
その時、けたたましいほどの激しい音が空に響き渡った。
ビクリと心臓が跳ねて、少し先の正門辺りから響くその音に恐る恐る振り向けば。
「麻白」
どうやら、神様はあたしを見過ごしてはくれなかったらしい……。