東方想雨天
「……ん……」

「……あれ……、ここ……は……?」
 少女は目を覚ますと、そこはあの時起きた場所とはうって変わって、まるで飛鳥時代の宮殿のような場所の入り口にいた。なぜここにいるのか?昨日の出来事は夢だったのか?そんな細かいことより、とても大変な事がある。あの時着ていた服は、至って普通のセーラー服だ。だが、今はその服はなく、全裸に近い状態で、しかも外にいる。
(え、ちょ、これ…公然ナントかで捕まるやつじゃん!ヤバイって…)
 しかし、近くに肌を隠せる布も無く、隠れる所も無い。
(あ…、終わった……。私の華やかなJKライフが…………JK?)
 普通なら理解できる言葉のはずだ。女子高校生、その名のイニシャルを取った略称のことだ。だが、その知識が少女から消されていた。無意識に放った言葉とはいえ、自分が口にした言葉が分からないということはおかしい。そんな疑問を抱いていると、宮殿の奥から一人の女性が出てくるのが見えた。
(あ……よかった!女性だ!)
 その女性の容姿は、青の髪に、まるで天女のような服を着ていてとても美しい姿だった。女性は、彼女に気付き、こっちへと向かってきた。
(うわぁ…。とても綺麗な人…)
 女性は、彼女の元に辿り着き、クスッと笑った。
「…そう。あなたが、雨神……。雨神、蒼劉寺雨那ね」
(雨神…?蒼劉寺雨那?何を言ってるの?私の本名は……あれ?)
 本名が思い出せない。というか、今まで経験してきたことを一切忘れている。あの時の現象を除いてわ。頭を抱え、悩む雨那に、女性は、雨那の頭を撫で、そっと抱き締めた。
「あ……あの………(暖かい……)」
「何も言わないで…。私が…あなたを、守ってあげるから…」
 女性は、雨那が安心して眠るまでの間、ずっと彼女を抱き締めていた。
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