妄想オフィス・ラブ ~キスから始まるエトセトラ~


月曜日ってなんでこんなに込むんだろ。
一本早くしたらもう少し余裕があるんだろうか。

150センチしかない私には朝のこのラッシュが何よりも苦痛だ。
入口付近で場所を確保出来ればまだ踏ん張れるが、中の方にまで流されれば吊り革に手が届かないし、揺れるたびに体が流されるし、散々だ。

元々スニーカーやらぺたんこ靴をを愛用していた私が社会人になってヒールのあるパンプスを履くようになった。それでも3センチヒールが限界だった。
身長プラス3センチヒール。それでも身長は153センチしかないと、あっという間に人に埋もれる。

そして今日はその散々な日。
人に流されて、全く捕まる場所がないところまで来てしまった。荷物を胸に抱き締めるように持ち、次の駅までなんとか踏ん張るために、足を肩幅まで広げた。

次の駅までの間に大きなカーブが1つある。まずはそこを乗り越えなければ!と、足に力を入れて頑張っても、あっという間に後ろに流されてしまった。

遠心力に思いっきり振り回されて、後ろにいた若い男な人の胸にぶつかるように寄りかかる。

しまった!

「すみませんっっ!」

後ろを向いて謝りたくても体が動かせない。早く体を戻したくても周りに挟まれて全く身動きがとれなかった。

「すみませんっっ!すみませんっっ!」

顔をみて謝れずとも、声だけでもと謝罪し続けていると、荷物を抱えていた腕を、ぐっと引っ張られて、後ろの男性に抱き締められるように抱え込まれた。

いつの間にか、背中にあった男性の胸が目の前に来ていて、抱え込んでくれているので体に少し余裕が出来たようだ。

「へっ?」





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