イジワル副社長に拾われました。
「難しいです。私、今まで『あの大人気商品のデザイン考えました』とか、『この作品で賞もらいました』とか、そんなアピールできるような仕事をしていなくて。年齢的にやる気だけじゃ認めてもらえないんですよねぇ」

休みの日にハローワークへ行ったり求人情報誌を見ては面接に行ったりしているけれど、前と同じような業務での仕事は中々見つかりそうにもなくて、未来さんに苦笑いを向けた。

「私としては琴乃ちゃんがここにいてくれるのは助かるから、次が見つかるのはいつでもいいんだけどなあ」

「コラ、大西。俺たちの都合で桐原さんの道を閉ざしたらダメだろ」

そこへ、未来さんと同じ、スペシャリストアドバイザーの康太郎さんが外から戻ってきて未来さんを戒める。

康太郎さんは私より十歳年上で、メイクの腕も超一流。

仕事には厳しいけれど、机の上には愛する奥さまとふたりの息子さんの写真を大事に飾っている心優しい一面もあったりする、素敵な男性だ。

「わかってますよ。でも康太郎さんだって、琴乃ちゃん来てくれて助かっているでしょ?」

「ま、それは否めないな。まあでも焦らずゆっくり探すといいよ」

そう言いながら、カバンから取り出した箱を、ポン、と私の机の上に置いた。

「今日のメイク教室の主催者からもらったんだ。よければどうぞ」

「いいんですか? これ、『ショコラ・ショコラ』じゃないですか!」

包み紙を見て、私は感嘆の声を上げる。

「桐原さんの知ってる店?」

「知ってるも何も、私ここのチョコレート、大好きなんですっ!」

「へぇ、そうなんだ。しかし桐原さん、いい笑顔だねぇ」

「ホーント。幸せそうだこと」

私のニヤケ顔を見て、康太郎さんと未来さんが笑う。

ふたりにいくら笑われても、嬉しいものは嬉しいんだもの。

表参道にあるチョコレート専門店の『ショコラ・ショコラ』は月に一度、自分へのご褒美に購入するくらいのお気に入りのお店。

そんなお店のチョコレートを目の前にして、喜ばずにはいられない。

「今からみんなで食べませんか? 私、飲み物買ってきますよ!」

元気よく椅子から立ち上がり自動販売機へ出かけようとしたその時、入り口から白井さんがひょっこりと顔を出した。

「康太郎さん、コイツ、しっかり仕事してます?」

と言って、私の方をチラッと見る。

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