イジワル副社長に拾われました。
香月化粧品本社ビルの入り口には液晶ビジョンがあって、自社製品のCMが流れている。
CMの下にはテロップのように時事ニュースや天気予報が流れることがあって、今日も同じように咲良さんの『プチ・リス』のCMの下には私が聞いたことのない国で地震が起きたというニュースが同時に流れていた。
「未来さん、地震ですって。この国、どのあたりにあるんだろ?」
「…………」
「未来さん?」
「……あ、ごめん。何?」
珍しくぼんやりとしている未来さんにちょっと驚きつつも、私は話を続ける。
「この地震があったっていう国、どのあたりにあるのかなって思って」
「東南アジアのあたりじゃなかったっけ?」
「へぇ。ちょっと地震の規模が大きそうだし、心配ですね」
「そうね……」
どうしたんだろ、未来さん。なんだかちょっと、顔色が悪いような気がする……。
「琴乃ちゃん、ごめんね。私ちょっとお手洗いに寄っていくから、荷物置いたら先に帰ってていいわよ」
「あ、はい。調子でも悪いんですか?」
「ん? 大丈夫よ、ちょっとトイレ我慢してただけだから。じゃあ、お疲れさま」
「お疲れさまでした」
未来さんと別れアーティスト部へ入り、持っていた荷物を元の位置に戻して、私は自分の椅子に腰を掛けた。
バッグから携帯電話を取り出してチェックすると、まだ白井さんからの連絡は入っていないようだった。
私から『終わりました』ってメールしたほうがいいのかな?
でも、白井さんが連絡くれるって言ってたし、とりあえず待っていたほうがいいのかも。
誰もいないのをいいことに、椅子をクルクルとお行儀悪く回転させながらそんなことを考えていると、窓ガラスに映った自分の顔と目が合った。
ん? ちょっとメイク崩れてるかも……。
鼻のあたりが少し光っているように感じる。
慌ててバッグからポーチを取り出し、手鏡でチェックすると、鼻のテカリだけではなく、まつ毛も少し、下向きになってきているみたい。
チークもちょっと落ちてきていて、血色が少し悪く見えるかも。