イジワル副社長に拾われました。



そして翌日の終業後。

私は二日連続で、未来さんの家にお邪魔していた。

「琴乃ちゃん、たくさん食べてね」

「はいっ!」

テーブルの上には、宗介さんの作った料理がズラリと並ぶ。

「宗介さん、お料理上手なんですねぇ」

「俺が家にいて、未来が仕事のときは結構作ってるんだぜ」

「おお、素晴らしい」

「琴乃ちゃん、ほめすぎ。宗介すぐに調子乗っちゃうから、それくらいにしておいてよ」

未来さんの言葉に、宗介さんはむくれ顔。

そんな宗介さんを華麗にスルーする未来さん。

グラスを手にして、私に向かって「乾杯」と笑う。

「相変わらずかっこいいなあ、シロは」

私から、昨夜の白井さんとの一件を聞いた後、宗介さんが感嘆の声を上げる。

「大企業のトップに立つ男だもん。そりゃ、宗介とは違うって」

「まあなあ。本人も跡を継ぐっていうのはわかってて、昔から努力してたもんなあ」

「で、琴乃ちゃんは航の何が知りたいの?」

未来さんの問いかけに、私は机に箸を置いて、小さく息を吐いた。

「私、わかんないんですよ、白井さんのこと。私の為を思って厳しいことを言ってくれたのはわかるんです。私も、いつも色々なこと諦めてることわかってますし」

言いながら自分のことが情けなくなってきて、乾いた笑いがこぼれる。

未来さんと宗介さんは、ただ黙って私の話を聞いてくれる。

「でも、厳しいこと言った後に、なんで家まで追いかけて来てくれたんだろう。謝るだけなら電話やメールでも出来たのに」

「そこにシロの本音が隠れてんじゃない?」

「白井さんの、本音?」

「そー。琴乃ちゃんのことが気になってしょうがないっつー本音」

「な、なに言ってるんですか。白井さんがそんな、私のことなんて気にしないですよ」

口ではそんなことを言ってても、心臓はドキドキしっぱなし。

未来さんも同じようなこと言うけど、白井さんが私のことを?

まさか、と思いつつも、もしそうなら、と期待する思いで鼓動が高鳴り、頬が染まっていく。

「宗介、あんまり琴乃ちゃんからかわないでよ」

「ちぇ。未来だっていっつもからかってるのに」
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