イジワル副社長に拾われました。
「ここ、どこですか?」

「あー……、俺ん家」

「え? 航さん、マンションの他に、一戸建てまで持ってたんですか?」

「んなわけねぇだろ。実家だよ、実家」

じっか、ジッカ、実家。

「実家っ!?」

思わぬ爆弾発言に口をパクパクさせる私に、バツの悪そうな顔で航さんが説明をしてくれる。

「うちの両親、クリスマスパーティが大好きでさ。毎年家族で集まるんだよ。今回はパスしようと思ってたんだけど、今日の昼間、いきなり電話かかってきて、『彼女と一緒に遊びに来てよ』って言われて、断れなかったんだ」

「そう、ですか……」

「悪かったな、急にこんなことになって」

「いえ、全然」

目の前でブンブン手を振る私に、航さんはまだ心配そうな顔をする。

「確かにびっくりはしたし、今も急に言われたので動揺もしてるし緊張もしてます。だけど……」

「けど?」

「航さんが、一緒に私を連れてこようと思ってくれたことが、うれしかったので、大丈夫です」

そう言ってニッコリ笑うと、少しだけ航さんの耳が赤くなったような。

そんな、気がした。






ピンポーン。

呼び鈴は鳴らすけど実家なので、航さんはそのまま玄関のドアを開ける。

「おかえり、航兄ちゃんっ!」

すると、パタパタと音がして、ひとりの男の子がひょっこりと顔を出した。

「おお、柊(しゅう)。来てたのか」

「うんっ。みーんな来てるよ」

柊くん、と呼ばれたその男の子は、航さんの手をつかんで離さない。

しばらくすると、柊くんより少し小さい男の子が、トテトテとやってきて、航さんに笑顔を見せる。

「蓮(れん)、元気だったか?」

「うん」

蓮くんも、柊くんと同様に、航さんの手をぎゅっとつかんだ。

ふと後ろを振り返った柊くんの視線が私に向けられて、柊くんがきょとん、と小首を傾げる。

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