イジワル副社長に拾われました。
納得したように、航さんがうなずく。

「まあ、今日ちゃんと会えば、もう二度と忘れないくらい強烈だからな、うちの家族」

ニカッ、と航さんは笑い、まだ状況のつかめない私の背中に手を回した。

「何があっても笑っとけ。後は俺がなんとかする」

「航兄ちゃん、早く早く」

「はやくー」

柊くんと蓮くんの声に呼ばれるように、私は航さんと一緒にリビングへと飛び込んだ。

「いらっしゃーい、琴乃ちゃん。待ってたのよ!」

入った途端、元気よくやってくる女性に手をキュッ、と握られる。

「初めまして、航の姉のさゆりです。夫と弟がお世話になってます」

遠目で見たときもキレイだったさゆりさんは、近くで見るとより一層素敵で輝いている。

思わずまぶしさにクラクラしそうになりながらも、私も挨拶を返していると、ソファに座っている男性から声が掛かった。

「さゆりちゃん、そろそろ僕にも自己紹介させてくれないかな?」

「はいはい、わかりました」

さゆりさんはニッコリ笑って私の手を離すと、キッチンへと戻っていく。

代わりに私の前にやってきた男性は、ふんわりと微笑む。

「初めまして、航の父です。琴乃さんは、車に轢かれそうになったところを航くんに救われたんだって?」

なんでそのこと、航さんのお父さんが知ってるの!?

目をまん丸くした私の横で、航さんが声を上げた。

「康太郎さんでしょ?」

「あ、バレた?」

はあ、とため息をつく航さんとは正反対に、康太郎さんは涼しい顔。

「俺たちのことは書かれて、航のことは書かれないとか不公平じゃん」

「子どもみたいなこと言わないで下さいよ……」

「あの、書かれるって?」

「あ。お義父さんね、小説家なんだよ。桐原さんも知らない? 白井卯月先生」

その名前を聞いて、ピョン、と心臓が飛び跳ねる。

「知ってます。私、何作か読んだことありますよ。でも、白井卯月さんって言ったら、どちらかというと女性向けの恋愛小説書かれてますよね?」

「よく言われるんだよ。女性じゃないんですねって」

そう言って、航さんのお父さんはニコニコと微笑む。

「ちなみに康太郎くんが言っているのは『その手で私をつかまえて』っていう作品なんだけど。読んだことあるかな?」

私はコクリとうなずく。

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