「君」がいるから【Ansyalシリーズ ファンside】 

「祐未ちゃん?
 フローシアに通いはじめて里桜奈に出来たお友達が亡くなったのね?」


ゆっくりと事実を確認するように言葉を繰り返す母に、私はゆっくりと頷いた。


その瞬間、ふわっと私を包み込む温もりを感じる。
気がついたら、母に抱きしめられてた。


「里桜奈、今日はもう買い物をやめて帰りましょう」

「でも……買い物は?」

「買い物なんて何時でも出来るわ。
 お店は年末年始も営業してるのよ。

 またお母さんが一人で来てもいいし、美桜やお父さんと来てもいんだから」



お母さんはそう言うと私を気遣うように屋上の駐車場へと戻った。


自宅に戻った私は、そのまま部屋に戻ってもう一度紗雪の携帯を呼び出す。
紗雪が何時に行こうとしてるのかを知りたくて。


繋がった紗雪は、すでに祐未の家へと集まってるみたいだった。


「里桜奈、早く来たかったら今からおいで。
 うちの家にとまったらいいから」


そう言うと紗雪は再び電話を切った。


「里桜奈、入るわよ」っとノック音が聞こえた直後に声が聞こえてドアが開く。



「お母さん、紗雪がねもう、祐未の自宅にいるの。
 紗雪と祐未は幼馴染だから家もご近所で、今からおいでって。
 行ってもいい?」


反対されるかもしれないと、おどおどしながら問いかけたものの
お母さんは黙って頷いてくれた。


「お父さんに送って貰いなさい。
 お友達の家まで」


そう言ってお母さんは、私の部屋を出て行った。



Ansyalの時と違って、同級生の告別式に着ていくのは制服。

制服に喪章をつけて参列しないといけないから、
何処かで用意しなきゃ。


そんなことを思いながら、どうにかこうにか出掛ける準備をして一階に降りると
そこにはお母さんが数珠を用意して待っててくれた。

そして用意しようと思っていた喪章も一緒に差し出してくれる。



「お父さん、もう車で待機してるわ。
 行ってらっしゃい。しっかりと、お友達とお別れしてくるのよ」



そう言いながら、私に福沢さんを二枚と蓮の葉が描かれた封筒を私に手渡す。

お母さんから受け取ったそれを鞄の中に片付けると、
お父さんの車に乗り込んで私は、祐未と紗雪の待つ場所へと急いだ。




祐未の自宅に辿り着いた時、
そこにはチームの総長・副総長・支部長をはじめとするチーム仲間の姿も確認出来た。

だけどチーム仲間の皆は、玄関前に立ち尽くしているばかり。



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