「君」がいるから【Ansyalシリーズ ファンside】 

23.告別式~最後の電話~



紗雪と別れて楓我さんの車で連れられてきたのは、
楓我さんと須藤先生がクラスマンション。


「里桜奈ちゃん。
 とりあえずソファー座ったら?」


促されるままにソファーに座った途端に、
歯がガクガクと震えだして止まらなくなる。

必死に止めたいつて思うのに、私の意志ではどうにもならなくて
両腕を抱きしめるようにソファーの上で小さく身を縮こまらせて体育座りをする。


楓我さんの携帯が鳴り響く音が聞こえたと同時に、
私の携帯もブルブルと着信を告げる。


「もしもし」

ガクガクと今も震え続ける状況で、
何とか自分なりに言葉にする。


「里桜奈、紗雪だよ。
 って、里桜奈大丈夫?」

「ご……ごめん……。止まらな……い」

「うっうん。用件だけ伝える。
 チームの情報網で、この後Ansyalの記者会見が
 0時過ぎてから始まるって。

 TVの中継が入るのかどうかまではわかんないけど、
 ファンクラブのトップから中継映像入るみたいだから
 確認して。

 里桜奈、無理しないのよ。
 貴方は一人じゃない。
 
 楓我さんもそこにいるし、離れてても私たちチームの仲間たちがいるから」


そう言うと、電話が途切れる音が耳に残った。




「里桜奈ちゃん、電話……」


楓我さんが、温かいホットココアを持ってソファーの方へと顔を出す。
やっぱり震えは止まらなくて。


ふと、額に楓我さんの掌がゆっくりと伸びてくる。



「やっぱり……。さっきから調子悪そうだなって思ってたら、
 熱ありそうだよね。待って、体温計とってくるよ」


そう言うと楓我さんは再び、私の傍から離れて
すぐに体温計を手にして戻ってくる。


手渡されるままに脇の下にいれて、震えが止まらないまま待ち続ける。
体温を測り終えるまでの時間がやけに長く感じる。


ピピっと音がなったと同時に体温計を抜き取ると、
私が見るよりも先に、楓我さんがヒョイっと私の手から抜き取ってじっと見つめる。


「TAKAの一件があった後だから、体が悲鳴あげてるかな。

 0時からAnsyalが記者会見するって今、優歩から電話が入ったから
 ほら布団に入って体休みながら見ないとね」


そう言って何処からか再び離れて持って来てくれた、ふかふかの毛布を背後からかけてくれる。


「ベッドの準備出来たら呼びに来るから、里桜奈ちゃんはとりあえずココア飲んで体温めて」



楓我さんは、再び離れて何処かへと消えていく。


ソファーの上で毛布を背中から被って、体育座りのまま、マグカップを両手で持ってココアを少しずつ飲みながらも
私はまだ、Takaの死の現実を受け入れることなんて出来そうになかった。


マグカップの中身がからっぽになった頃、
楓我さんがリビングに姿を見せて、ソファーの上から私をゆっくりと抱え起こす。

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