夏の終わりの失恋歌(恋愛中毒1)
「でないと、どうせまた淋しさを紛らわせようと適当に男探すだろ?」

失礼なこと言わないでよ、といおうかと思ったけれど、それはそれであっているような気もしたので、彩華は言葉を失う。

「そのたびに振り回されるくらいなら、とりあえず俺で淋しさ紛らしといて」

「……ヒコって私の、兄か親ですか?」

あまりもの過保護ぶりに、頭痛を覚えた。
しかし、伸彦はしれっと頷く。

「そんな感じ。
気付かなかった?」

「残念だけど、全然」

「そっかー。
俺、義理堅いからしょうがないじゃん?」

「義理堅い?」

「入学式の日のことも、当然覚えてないよなー」

そりゃそうだ、と、苦笑しながらヒコは煙草に火をつけた。


入学式の日かぁー、と、彩華は思考をめぐらせる。
愛娘のキャンパスライフを心配した母親が、やたらと周りの人に
『娘のことお願いしますねー』
って言って周っていたような……

あまりにも恥ずかしくて記憶から抹消したい過去の一つだ。



「私の母にあっちゃったりしたってワケ?」

「そーゆーわけ」

「でも、だから同じサークルにいるとかってわけじゃない……よね?」

そこまでくるとストーカーですけど。

「当たり前だろ?
あの状況で、お前も音楽が好きだろうとか分かるわけねーじゃん」

うーん……じゃあ偶然かー。
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