夏の終わりの失恋歌(恋愛中毒1)
11.秋の気配
「すーごーいーっ」

二十歳の誕生日のその日。

彩華はダーツバー『Little Tokyo』でライブを演奏したり、仲間のライブを見たりしながら夢見心地の時間を過ごしていた。

今は伸彦が弾き語りをしている。これで全て終了だ。

「ぜーたくものだねー、彩華は」

隣の席に来た沙織が日本酒片手にしみじみ言った。

「そぉ?」

彩華は頬を緩ませながらも、聞き返す。

「これが伝わらなきゃ、サイテーだよ」

「だよね」

分かっているから、今日は主役なのにアルコールは控えめにしている。


「彩ちゃん」

マイク越しに名前が呼ばれる。
どきり、と、心臓がはねる。

「こっちに来て、唄って」


ええええ?

打ち合わせもなしにそんなオファーを受けた彩華は驚きつつ、前に出た。
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