それでもボクはキミを想う
響の車仲間が集まるという山頂にある駐車場に行くと、
『おーいっ、響!!』
『あっ、浅井お疲れ!!
今日は姉貴もいるから迷惑かけるけどよろしく!』
『おうよっ!!
俺は浅井賢治。
響の姉さん、よろしく!』
ニカッと笑って握手してきたちょっと強面だが、笑顔はやんちゃな少年みたいで、響と同じ歳の浅井くんに私も自己紹介し、挨拶したら、“莉乃姉(りのねぇ) ”と、あだ名がついた。
『いろんな車があるのね?』
『それはそうだよ。
なんといっても車好きが集まってるからね。
土曜の今夜はまだまだ集まるよ。』
『ふーん…ねぇ、響の車と同じのは無いみたいね?』
『まぁ、中々いないかもなぁ?
姉貴、僕の車の名前知ってる?』
『ん…、セダン?』
『それは形だよ!!
あれだけ乗っていて知らないなんて…』
『だって興味なかったからねぇ…
ごめん。覚えとく…で、何?』
はぁ…と悲し気にため息つく響は私を見てた。
浅井くんは、笑いながら私に言った。
『“ローレル”だよ莉乃姉。
で、ちなみに俺のあの赤い車は“トレノ”で、型式がAE86だから、よく“ハチロク”ってよばれてんだ。
莉乃姉、俺の車に乗ってみねぇか?
…と言ってるまに、先輩もキタキタ!!
あの黒い車も俺と一緒でハチロクだけど、“レビン”って名だ。
ライトが違うだろ?』
ヴォーヴォーと大きな音をたてながら、その黒いレビンが赤いトレノの隣に止まった。
『ちーっす!久須本先輩。
今日は可愛い響の姉貴も来てるんすよっ。』
『おっす、浅井!藤崎の姉貴って…?』
そう言う久須本さんは、私をチラリと見ると車からさっさと降りてきた。
響の隣にいた私の手をとり、
『初めまして!
俺、久須本修平です!!
修平って呼んで下さい!』
かっこいい人と思うけど何か軟派な人で苦手かも…
久須本さんの第一印象をそう思いつつ、とりあえず名前を言い、よろしくと 軽く挨拶して逃げ腰の私にまだ降りかかる…
『莉乃さん、俺の隣に乗りません?』
『あーッ!!
ズルイッスよ先輩!!
抜け駆けはダメっすよ!!
俺が先に誘ったんっすからね!!』
『賢治くん、ここは先輩に譲るもんだろ?』
と、少し威圧感あるオーラを出す久須本さんと、不気味な笑みを見せる浅井くんに響が仲裁に入った。
『あの~、姉貴誘ってもらって申し訳ないんですが、ツインドリの練習するんですよね?
邪魔になったら困るし、二人の走りを見せてもらえたらなぁて?』
と、上手く宥めてた。
『しゃーねぇなぁ、じゃ、しっかり俺のかっこいいとこ見せてやっか!!』
『しっかり見てて、莉乃さん!
貴方の為に走りますから!』
なんて二人で言いながら移動始めた。
そして響もクサイ台詞にちょっと引いてる私を車に乗せ移動を始めた。