どうしてほしいの、この僕に
姉が友広くんににっこりと微笑みかけた。
威圧感のある笑顔を前にして、彼は少し怯んだらしい。
「努力はしますが……」
約束はできかねる、と言いたげな顔でうつむいた。
確かに竹森サイラは、他人の説得を素直に受け入れるタイプではなさそうだ。しかし友広くんの裏切りに本気で怒りを爆発させたのは、裏返せば彼を心の底から信じていた証でもある。
そう思った途端、急に目の前が開けたような気がして、思わず「あっ」と声を上げた。
隣で姉が「ん?」と反応する。
「友広くんはサイティさんの脚本、読んだ?」
「いいえ」
「それならぜひドラマを見てほしいの」
なぜ、と問うように友広くんは眉をひそめた。
私はずいと膝を進め、暑苦しいくらいの熱気で彼に念を押す。
「とにかく見て。私の演技は下手くそだけど、とても素敵なストーリーなの」
「そうですか」
「できればサイティさんと一緒に見てほしい」
友広くんはしばらくの間、真意を探るように私をじっと見つめていた。
私も負けじと彼に視線を送る。
息が詰まるような数十秒——それを遮ったのはドアの開く音だった。
隣の部屋から優輝が出てきた。その後に従う沙知絵さんは満面の笑みを浮かべている。
「思い切って優輝に会いに来てよかったです」
沙知絵さんが胸の前で手を組み、感激した様子で社長へ歩み寄った。
顔面が蒼白になっていた社長は、沙知絵さんを見るなり生気を取り戻し「そうか、そうか」と笑顔で頷いた。
「それで、帰りも送っていただけますか? 優輝と一緒に」
——えっ!?
大手プロダクションの社長に対しても沙知絵さんはまったく物怖じしないらしい。
「もちろんだよ」
社長は快諾すると、優輝と高木さんを見比べた。
「そっちは大丈夫?」
「彼女を送っていきたいので、僕からもお願いします」
優輝が神妙な顔つきで軽く頭を下げた。
私はそこから目をそむけ、サンドイッチに手を伸ばす。
——いや、そうだよね。お父様にお会いしたほうがいいよ。海外に拠点を移すならなおさら。
とは思うものの「たとえ身内であっても絶対に会わない」と彼の口から直接聞いたのは昨晩のことだ。
デビュー以来、一貫して身内の接触を拒絶していたくせに、沙知絵さんに会った途端、まるでてのひらを返すように受け入れたのはなぜなのか。
威圧感のある笑顔を前にして、彼は少し怯んだらしい。
「努力はしますが……」
約束はできかねる、と言いたげな顔でうつむいた。
確かに竹森サイラは、他人の説得を素直に受け入れるタイプではなさそうだ。しかし友広くんの裏切りに本気で怒りを爆発させたのは、裏返せば彼を心の底から信じていた証でもある。
そう思った途端、急に目の前が開けたような気がして、思わず「あっ」と声を上げた。
隣で姉が「ん?」と反応する。
「友広くんはサイティさんの脚本、読んだ?」
「いいえ」
「それならぜひドラマを見てほしいの」
なぜ、と問うように友広くんは眉をひそめた。
私はずいと膝を進め、暑苦しいくらいの熱気で彼に念を押す。
「とにかく見て。私の演技は下手くそだけど、とても素敵なストーリーなの」
「そうですか」
「できればサイティさんと一緒に見てほしい」
友広くんはしばらくの間、真意を探るように私をじっと見つめていた。
私も負けじと彼に視線を送る。
息が詰まるような数十秒——それを遮ったのはドアの開く音だった。
隣の部屋から優輝が出てきた。その後に従う沙知絵さんは満面の笑みを浮かべている。
「思い切って優輝に会いに来てよかったです」
沙知絵さんが胸の前で手を組み、感激した様子で社長へ歩み寄った。
顔面が蒼白になっていた社長は、沙知絵さんを見るなり生気を取り戻し「そうか、そうか」と笑顔で頷いた。
「それで、帰りも送っていただけますか? 優輝と一緒に」
——えっ!?
大手プロダクションの社長に対しても沙知絵さんはまったく物怖じしないらしい。
「もちろんだよ」
社長は快諾すると、優輝と高木さんを見比べた。
「そっちは大丈夫?」
「彼女を送っていきたいので、僕からもお願いします」
優輝が神妙な顔つきで軽く頭を下げた。
私はそこから目をそむけ、サンドイッチに手を伸ばす。
——いや、そうだよね。お父様にお会いしたほうがいいよ。海外に拠点を移すならなおさら。
とは思うものの「たとえ身内であっても絶対に会わない」と彼の口から直接聞いたのは昨晩のことだ。
デビュー以来、一貫して身内の接触を拒絶していたくせに、沙知絵さんに会った途端、まるでてのひらを返すように受け入れたのはなぜなのか。