魔女の瞳Ⅲ
六百年以上の時を生き続けて、こんな心境になるのは初めての事だ。

だけど、認めなければならない。

表面上は『渋々付き合ってやっている』って顔をしているけど。

…私は今、人生が楽しい。

もしかしたら、エリスと暮らしていた時と同じくらい。

毎日クラスメイト達に振り回されて、修内太のお人好しぶりにがなって、それを冷やかす長老を追い回して。

それでも私は、人生を謳歌している。

エリスが死んで以降、止まってしまった私の時間。

永劫の闇を歩き続けるしかなかった筈の私の人生。

その時間が、また再び動き出したのかもしれない。

今の生活が好き。

御影市が好き。

それらを好きな私が好き。

そんな『好き』を得るきっかけになったアイツが、多分…。

そこまで考えを巡らせて。

「はっ!?」

部屋のドアの隙間に視線を感じる。

見ると。

「頬を染めて物思いに耽って…恋する少女の表情じゃのぅ、メグ」

長老が覗き見していた。

当然、餌抜きが数日延長されたのは言うまでもない。

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