強引上司がいきなり婚約者!?
なにがおかしいのか、専務は片方の頬を歪めて私を見下ろす。
それから私が腕に抱えているものに目を留めると、首を傾げて瞬きをした。
「もしかして彼氏持ち?」
「え?」
専務が指し示す指の先には、ふたつのお弁当がある。
兎川さんのぶんと、私のぶん。
ふたつのお弁当を隠し持つための大きなトートバッグは腕にかけてあるけど、慌てて飛び出して来ちゃったから今はむき出しだ。
私はとっさに返す言葉が見つからず、ピシリと固まった。
やばい、どうしよう。
なんて言い訳したらいいの?
私、こういう場合は『そうです』って答えても大丈夫な契約だったっけ?
「なんだ、志帆ちゃんはフリーかと思ってた。俺、そういう嗅覚鋭いんだけどな」
「えーっと……」
私はモゴモゴと意味のない言葉を呟きながら、バッグの中にお弁当を突っ込む。
今更遅いってことはわかってるけど!
「あれ。ということは、社内の男なの?」
腰を折った専務にグッと顔を覗き込まれ、目が泳ぐのが自分でもわかる。
専務は私の肩越しに非常階段のほうへチラリと視線を向けると、愉快そうに口角を持ち上げた。