強引上司がいきなり婚約者!?
金曜は朝からすっきりと晴れた日で、そのおかげで事なかれ主義の私も、いつもより大きな気持ちになっていたんだと思う。
例のエレベーターを降りてロッカールームまでの廊下を歩いていると、床にきらりと光るものが落ちていた。
私は顔の横でふわふわと広がる髪を耳にかけ、屈みこんで手を伸ばす。
拾い上げてみると、四角い形のカフスボタンだった。
地味ではなくおしゃれだけど上品で、主張しすぎない趣味のよさが垣間見られる。
私はすぐに顔を上げてきょろきょろと頭を動かし、廊下の反対側でジッと床を見つめている人物を見つけた。
「蒼井さん」
呼びかけると、彼がしかめ面をこちらに向ける。
私は蒼井さんのところまで足早に駆け寄って、手のひらを広げて見せた。
「あの、まさかなんですけど、このカフスって蒼井さんのですか」
あちゃ、いけない。
"まさか"なんて言っちゃった。
がっちりした体型でガハガハ笑う体育会系代表みたいな蒼井さんがこんな繊細なデザインを選ぶなんて、ちょっと意外だもん。
私が決まりの悪さにギュッと唇を引き結んだことにも気づかず、蒼井さんは私の手のひらごとカフスボタンを両手で握りしめた。