強引上司がいきなり婚約者!?

「ありがとう! 探してたんだよ、これ! あ〜、ほんとによかった」


蒼井さんはホッとしたように目尻を下げて、私の手をブンブン振る。


「実はこれ、この前の誕生日に嫁にもらったカフスなんだ。失くしたらぶっ飛ばされるところだったよ」


本気で冷や汗をかきそうな蒼井さんの様子を見て、私も頬を緩めた。


そうか、奥さんのプレゼントなんだ。

だから女性受けの良さそうな上品なセンスだって思ったんだ。


私は心の中で納得して頷く。


「そうだったんですか。よかったですね」


蒼井さんは去年結婚したばかりだけど、奥さんとは学生時代からの付き合いで、とっても愛妻家なんだってウワサだ。


いいなあって、思わず呟きそうになった。

視線を下げてブンブンと頭を振る。


どんなに羨んだって、私は偽物の婚約者だし。

彼が私に本気になるつもりがないってことは、契約の5項目を見ればすぐにわかる。


私がボーッとして下を向いていると、廊下を歩く足音が後ろから近づいてきた。

蒼井さんが私の肩越しにその人を見つけて両眉を上げる。


「都合よく手ぇ握ってんなよ」


不機嫌そうな兎川さんの声が聞こえたかと思うと、彼は足を止めることなく私たちを追い越していった。
< 61 / 77 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop