強引上司がいきなり婚約者!?

いくらそう言い聞かせても、顔がこわばってるのがわかる。


あーあ、変なの。

兎川さんの車に乗るのがこんなに切なくなる日がくるなんて、少し前の私ならちっとも信じなかっただろうな。


『兎川さんのことを好きになるよ』って言われたときの私のしかめ面を想像すると、さすがに頬が緩む。


彼のことを苦手な俺様上司だと思っていたときのことを思い出したら、ちょっとだけ強がる元気が出てきたような気がした。


* * *


兎川さんのブラウンのドイツ車は、会社から少し離れたところにある契約駐車場に止めてあった。


私がシートベルトを締めたのを確認すると、兎川さんがゆっくりと車を発進させる。

私は膝の上にバッグを置いて、持ち手をギュッと握りしめていた。


先に沈黙を破ったのは兎川さんだった。


「そろそろ覚悟は決まったか?」


おもしろがるような声音で言われて、心臓がひと回り縮まった気がした。


チラリと横目で運転席に座る兎川さんを盗み見る。

やっぱり兎川さんにもバレてるんだ。
私の気持ちが変わってしまったこと。

この先どうするのかを私に委ねているんだってわかって、残酷な選択に涙が出そうになる。
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