強引上司がいきなり婚約者!?
「あの手この手で、ゆっくり、丁寧に、しつこくな」
兎川さんがおもしろがるように、でもちょっとだけ恨みのこもった口調で言うので、私は堪えきれずプッと吹き出した。
「それはもう聞きました!」
シートに背中を預けてくすくすと笑うと、兎川さんもおかしそうに声をもらした。
相手が兎川さんなら、罠にハマるのも悪くないかもしれない。
今の満ち足りた気持ちを植えつけられた私は、この先どんな怪しい約束でも、彼の提案なら何度でもサインするだろう。
「志帆」
低くて心地いい声に名前を呼ばれて、顔を上げる。
兎川さんが左手を伸ばしてきたので、私はそれを両手で掴んだ。
「本気で俺のものになるなら、覚悟しろよ」
ギュッと手に力が込められる。
きっともう、この手を離したくない。
この手を取るのが正解だ。
ここへ来るまで随分迷ってしまったみたいだけど、彼ならどこへでも連れて行ってくれると知っていた。
私はあたたかい手を握り返して応える。
兎川さんには見えないとわかっていたけれど、一度だけ大きく頷いた。
-END-
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