男の秘密 -繋がる未来-
遂に食事会当日、前日は眠れないだろうからと、仕事を理由に自室で眠ったが、案の定一睡も出来なかった。

目の下の隈を化粧で誤魔化し、この日の為に羽奈が選んでくれたスーツを着る。

忍の家族、特に父親に印象のいい可愛らしいデザインのものだった。

癖のある髪も、バレッタで少し束ねて、広がらないようにしてみたり、忍とのデートとは違うがかなり気合が入っている。

「何か・・気合入ってない?」

軽い感想のつもりの忍の言葉に驚きを隠せない。

「・・・だって、久しぶりの外での食事だもの・・」

言葉に詰まりながら、少し俯いて答える。

『おかしくなかった?』

顔を見られないように俯いたので、忍の表情は分からなかったが、特に変わった感じでは無かったので、優もホッとして顔を上げると、忍がこちらをジッとみていた。

「!?」

至近距離で忍の顔を見て、真っ赤になってしまう優にそっと、口付ける忍。

それだけで、ボウッとしてしまい、忍に支えられた。

「可愛かったからしたけど、失敗だった」

とても困った顔をしている忍に、不安な気持ちになった。

「あぁ、失敗の意味が違う。その、キスだけで済まなくなりそうで・・・」

フイっと横を向きながら話す顔にドキドキして、暫く言われた言葉の意味が分からなかったが、気付いた時には更に真っ赤になった。

「時間が勿体無いから、行こう」

忍に促されて何とか動き出したが、心臓がバクバクいい出し、中々収まってくれなかった。
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