雀の恩返し

広い広い社食だけど
中岡を探すのは簡単だった。

今日も女の子達を目の前にして、オーバーリアクションで会話を弾ませ、彼女達を楽しませていた。

「ここいい?」

僕が聞いたら女の子達は「どうぞどうぞ」と笑顔を見せ
中岡は「えーっ!」って嫌な顔をする。
想定内です。

僕は後ろに隠れている木之内さんに席を譲ると、今度は女の子達が苦い顔をして顔を見合わせた。
彼女達の表情を見て、木之内さんは動きを止める。

この女子特有の、気まずい雰囲気を打ち破ったのは中岡だった。

「大歓迎。亀ちゃんはいらないけど木之内さん座って」って明るい声を出し、僕は木之内さんの背中を軽く押す。

テーブルを挟んで
女子三人と
中岡と木之内さんと僕でランチタイム。

「で、今日の弁当男子の中味は何?」

「うるさい」

スズメの存在は内緒なので、豪華なお弁当は僕が自分で作った事にしている。
作り方を知らないので実はヒヤヒヤ。

ランチボックスを開くと、サッカー選手がホームでゴールを決めたような歓声が上がった。
盛り上がり過ぎ。
そんなに見ないで欲しい。

「これ亀山さんが作ったんですか?」

「朝からローストビーフサンド作るって何者?」

「カツサンドもある」

そういえば
朝から揚げ物してオーブンも使ってたっけ。
普通のサンドイッチでいいのに。
逆に恥ずかしい。

「このシンプルな玉子サンド美味しそう」

「こっちの野菜サンドがいい」

いいから
早くみんな自分のを食べなさい!
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