この想いが届くまで
 部屋まできて、玄関に不在の間に溜まっていき整理が追いつかない荷物や郵便物が積まれて置いてある以外は、スッキリと埃ひとつ無い綺麗室内に未央は思わず声が出る。
「キレイですね……掃除好きなんですか?」
「まさか。一週間以上不在にしてたのにどうやって?」
「た、たしかに」
「週一くらいでハウスキーパーにお願いしてる」
「……キッチンもずいぶんこう、スッキリと……見えない収納ですか?」
 シックで落ち着いた雰囲気のリビングの一角、開けた素敵なアイランドキッチンには冷蔵庫とウォーターサーバーとエスプレッソマシンしかないように見える。
「キッチンは使わないなぁ。色々開けてもなにも出てこないよ」
「い、インテリア素敵ですね! ソファもテーブルも照明もオシャレで……!」
「全部コーディネーターにお願いした。一つずつ揃える時間もなかったし」
「そうですか……」
 口をあけてあっけに取られていると西崎が不思議そうに笑った。
「二度目なのに。はじめて来たみたいな反応だ。何飲む? 水かコーヒーか酒類しかないけど」
「お水でいいです」
 返事をすると適当に座ってと促され肌触りの良いラグの上に座る。
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