この想いが届くまで

03 朝まで一緒に

 空港からタクシーで直接未央を迎えに行き二人は久しぶりに会うことはできたが、タクシーの車内では「おかえりなさい」「ただいま」といった一言二言の会話のみで沈黙が続く。それでも未央は嬉しさで胸がいっぱいで、外に目を向けながらも隣に座る好きな人の気配に胸を高鳴らせた。
 しばらくの沈黙のあと、おもむろに西崎が口を開いた。
「お腹は?」
「あ……空いてるかってことでしょうか。実は今日お昼食べ損ねて変な時間に食べちゃったのでまったく……」
「うん、俺も空いてない。……すみません、この辺りで停めてもらってもいいですか」
 タクシーを降りて未央はキョロキョロと周りを見渡す。あとから降りてきた西崎に着いて足を進める。
「結構もう時間も遅いしな……ドライブでもする?」
「いえいえ、お疲れだと思うので。今日は一目会えたらいいなって思ってその……わがままを言ってしまって」
「一目会って帰るつもり?」
「えぇっと……」
「とりあえず一回家行ってもいいかな」
「はい。……あれ?」
 未央はタクシーを降りた時から思っていたが、マンションを正面から上を見上げて改めて以前来た時と別の場所ではないかとふと疑問を口にした。
「引っ越しましたか?」
「いや? あぁ、前は別の入口だったかな。あの日は人目につかない方がいいと思って」
「あの日のことは忘れてください……!」
 記憶から消し去りたい思い出ばかりで、それ以外のことはそもそもあまり覚えていないため以前来た事実はあっても初めて来る場所のような感覚だった。未央は慌てて話題を変える。
「す、すごく大きくて芸能人が住んでそうなマンションですね……!」
「会ったことはないけど。最上階にユーチューバーが住んでるっていうのは聞いた事あるな」
「ひぇぇ」

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