この想いが届くまで

04 幸せを噛みしめる

 上品で落ち着いた配色と雰囲気の中、間接照明の柔らかな光が未央の顔をぼんやり照らす。その髪をいじりながら未央の顔をまじまじと見つめ、よく寝てるなと心の中で呟いた。指先が頬に触れてゆっくり滑らせてみたけど起きる気配はない。
 よく見ると目の淵に涙の跡がある。無理をさせてしまった自覚はあるが、できるだけ優しく触れた。一度目の時は優しくできなかったから。 
 しばらく寝顔を眺めて、それでもまったく眠気が出てこない西崎は一度起きることにした。何も身に着けずに寝てしまった未央の肩までしっかり布団をかけ、部屋の室温を上げて寝室をあとにした。

 シャワーを浴びて、肌触りの良いリラックスした部屋着を身にまとい髪をタオルドライしながら部屋の壁に掛けられた時計を見る。深夜三時。外が明るくなる前には寝たいなと思いながら、部屋の出入口に無造作に積まれた郵便物と荷物のもとへ行く。
 箱や書類を一つずつ手に取り、これなんだっけ? 、こんなもの注文したか? と心の中で思い時々中身を開けながら確認していく。中身を出したものの箱は畳んだり仕分けながら整理を進めていたがふとある荷物の前で手が止まった。
 以前百瀬から受け取った陽菜の遺品ではないかと言われたものだった。正確には受け取らずに自宅に送り届けるよう伝えて、知らぬ間に自宅に届いていたようだった。手が止まったのは一瞬で、何のためらいも無く中身を空けようとしてやっぱり止めた。今、じゃないなと。以前は確かに見るのをためらった。でも今は別に何が出てこようと大したことはないと思える。また後日、未央がいない一人になった時にでも見るか、と荷物の整理を進めるためにその箱を移動させようと手に持つと、想像したより重く、他の荷物のようなダンボールではなく蓋つきのギフトボックスのようなものだったため少し持ち上げたら蓋だけ残って中身が落ちてしまった。
「なんだ……? 紙?」
 バサバサと音を立てて床に落ちたものの一つを手に取る。さっと目を通して、また別のものを手にとりそれを繰り返し、西崎はしばらくその場から動かなかった。
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