溺愛ドクターに求愛されて

目が合っても全然私から視線を外さないその人を見て少し考えるけど、知り合いではないな。


あんな綺麗な男の人、一回見たら忘れないし。


私が知り合いにでも似てるのかな……。


『沙織?』


弘樹の声にはっとしてその人から目を反らして、私は弘樹に最後の言葉を告げる。


「ごめんね、弘樹。今までありがとう。……さようなら」


『沙織……』


私の名前を呼んだ弘樹の声に、涙が出そうになって私はそれをぐっとこらえて電話を切った。


足早にホテルに入ってチェックインを済ませて、部屋に入った私の目からこらえてた涙が一気に溢れだした。


後悔はしてない。私に母のように生きることはできない。


弘樹の裏切りを、私は許すことはできない。


鳴っている携帯の電源を落としてベッドの上で泣き崩れる。


そのまま一晩中泣き続けた私は、最低最悪な二十九歳の誕生日を迎えた。


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