溺愛ドクターに求愛されて
「大谷、五〇三号室の田中さん清拭とシーツ交換一緒に入ってもらっていい?」
受け持ちの患者さんに渡す書類を作っていた私はその声に顔をあげた。
そこにいたのは一つ年上の先輩の井上さんで、私の一番仲の良い先輩でもある。
「あ、はい。いいですよ。あ、じゃあ私リネン庫からシーツとか持ってきますね」
井上さんにそう言って私はシーツ交換に必要なものを取りに行くべく立ち上がる。
「ありがとう。じゃあ私、清拭の準備しとくね」
井上さんと別れて、私は病棟の端にあるリネン庫に向かう。
シーツや包布、オペの時に患者さんが着る病衣などが入っているそこの扉を私は何のためらいもなく開いた。
だってそんな所に人がいるなんて思ってなかったから。
だけど人がいるはずがないそこに人がいて、私は驚いて目を見開く。