同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~


「別に他人事だとは思ってねぇよ。俺たち夫婦のことだ」


極力彼女の神経を逆なでしないように言い聞かせるが、小梅は首を横に振ってさらに俺を罵る。


「思ってます。だから、海外旅行なんかに誘うんです。……せっかく毎日基礎体温はかって排卵のタイミングわかってきたところなのに、環境の変化があるとそのタイミングがずれちゃうとか、そういうこと全然考えてない」


怒りを押し殺しているのか、呼吸で肩が上下している。

今日の小梅はいつにも増してナーバスになっているようだ。俺がどう接したらいいか戸惑っているうちに、彼女の口からは次々不満が飛び出す。


「仮に妊娠していたとしたら、飛行機に乗ることだって危ないんですよ? 食事だって、いつもちゃんとバランスのいい献立にしてるのに、こんな場所じゃそれもできないし」

「小梅……落ち着けって」


俺はビーチチェアから立ち上がり、彼女を落ち着かせるために肩を抱こうとしたが……。


「京介さんの秘書になってから忙しい日が増えて、あたしが誘いたい日もすぐに寝ちゃうことが多くて……そのくせ、妊娠の可能性なんてない日に限っていつも――」


小梅はそこで言葉を切ったものの、俺の中の何かがぷつっと切れて、肩に回そうとしていた腕がぶらんと垂れ下がった。

いつも……その先はなんだよ。ばかみたいにお前を抱くってか?

そりゃそうだろ。別に妊娠がどうとか関係なく、俺はお前を愛してるんだから。

その理屈でいくと、お前を抱くのは排卵日に限れってことか?

なんだそれ。俺は妊娠のための道具かよ。


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