同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~


全体で八十坪ほどある広いオフィスを持つ開発部は三つの課によって成り立っている。

まずひとつ目は、コーヒー開発課。

コーヒーの味に関するスペシャリストが四名いて、併設されている工場で生産中の製品の味を常にチェックすることや、開発途中の試作品の風味のチェックが主な仕事。

そして、それらをデータ化して企画課に提出する作業をしている。

以前は単独で別の部屋を使っていたようだけれど、去年社長が交代してから部署の体系が大きく変わり、それを機に商品開発部に属することになった。

理央や比留川くんのいる企画課は、課員十名。開発がやりたい社員にとってのいわゆる花形部署だ。

新製品を企画、立案して、社内の承認が得られれば、実際に商品化して世に送り出される。

コーヒー開発課も企画課もとにかく人気の部署で、大学で食品学や栄養学を学んできた私も、入社が決まったときにはどちらかに配属されることを望んでいた。

しかし、その希望はかなわず……。


最初の一年は総務部管理課という、いわゆる雑用部署で“ОLなんてこんなもんかな”という平凡で穏やかな日々を送った。

上司も先輩もいい人たちばかりで、雑用だって大事な仕事だし、このまま管理課で自分の役割を全うするのもいいのかも、と思っていたのだけれど。

翌年、急きょ欠員が出たとかで、商品開発部の片隅にあるもう一つの課――“お客様相談室”に配属されることになった。

それから、私の平凡で穏やかな日々は一変したのである。


< 4 / 236 >

この作品をシェア

pagetop