同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
後悔するような口調に、少しだけ心が落ち着きを取り戻す。
嵐と別れてから、もう五年。彼だってずいぶんと大人っぽく、素敵な男性になった。
内面も、今とあの頃の彼とでは、違う部分があるのかもしれない。
「いいよ。……昔のことだもん」
私はぎこちなくそれだけ返したけど、嵐はまだ私に何か言いたそうな目をしていた。
数秒の沈黙ののち、彼が切り出す。
「みちる、今時間ある? 昼飯でも一緒にどうかな」
「え?」
突然の誘いに、予定があると嘘をつこうかどうか迷った。
けれど、比留川くんに置いてけぼりにされた私は、今日も明日もノープラン。
それに、嵐と話すことで過去のわだかまりが解けるなら……。
「うん……平気」
私の返事を聞くと、嵐はなぜか近くにいたこの百貨店の従業員に話しかけていた。
嵐より若そうなその男性従業員は彼にペコペコしていて、なんでだろうと思いながらその様子を見守る。
しばらくして戻ってきた嵐が、屈託のない笑顔で言う。
「休憩もらえた。さっそく行こう」
……休憩?
目を瞬かせて嵐をよく観察すると、彼の胸元には百貨店のマークが刻まれたパールホワイトの名札が光っていた。
「嵐、ここで働いてるの?」
「ああ。……そっか。上京してからのこと、みちるは知らないよな。それも含めて、ゆっくり話そうか」