箱入り娘と黒猫王子
「花」

「ん??」

「ありがとうな」

「…え?」



何が…??私何もしてないよ、



「よく頑張ったな。偉いぞ。」

「な、にが?」



言葉が詰まった私に、うんと優しい笑顔で、
大きな手が頭を包み、くしゃくしゃと髪を乱す。



「でも俺の前くらい、頑張らなくていいんだぞ。」



あぁ…お兄ちゃんには、やっぱ敵わないなぁ…。

私の涙が零れるより先に、抱きしめられて、
「よしよし、」って言いながら、小さい子をあやす様に包まれた。

お葬式以来、久しぶりに泣いた。
声を出して泣いた。

ママ、私高校生になったよ。
ママにも、制服姿、見て欲しかった。
ママと一緒に、入学式、写真撮りたかったよ。



「お前が、安心して泣ける相手が早く見つかるといいな…」



静かにそういったお兄ちゃんの言葉は、私の嗚咽に掻き消されて聞こえなかった。
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